3焦点眼内レンズ Aculiva Trinova Pro
こんにちは。
本日は本年5月にわかもと製薬から発売された3焦点眼内レンズ「アクリバトリノバ Pro」についてのお話しです。
Aculiva Trinova Pro
このレンズは「Sinusoidal Vision Technology(正弦波回折構造)」という独自の技術を採用した3焦点眼内レンズです。
遠方から手元30㎝までの視力が得られる3焦点眼内レンズです。(手元加入度数が+3.35D)
正弦波回折構造(Sinusoidal Vision Technology
この技術は、自然界に見られる正弦波(なめらかな波の形)のパターンをヒントに開発されたそうです。
レンズの表面にある光の回折格子(光を遠く、中間、近くの3つの距離に分けるための構造)が、従来のレンズと比べてなめらかに変化する構造(スムージング)になっています。
このなめらかな構造により、まぶしさ(グレア)や光の輪(ハロー)といった異常な光の見え方(異常光視現象)の軽減ができるとのこと。
光がレンズを透過する効率(光透過率)の向上も図られています。
アクリバトリノバ Proは93%の光透過率を達成しており、これは30歳の健康な水晶体(光透過率95%)に近い数値です。光のエネルギーロスは7%に抑えられています。
多焦点眼内レンズは、光を遠く、中間、近くに分けるため、それぞれの光の分配は少なくなってしまいます。
もともとのレンズ全体の光透過率が大きいほど、それぞれの焦点に振り分けられる光が多くなり、視認性がアップします。
ですので、この光透過率が大きいのはとても良いことなのです。
光エネルギー配分
レンズの光学部の中心にあるリングの直径は1.4mmと広範囲で、遠方視の光配分がしっかり確保される設計です。
アクリバトリノバ Proは、瞳孔の大きさによって、光のエネルギーの中間、近くが適切に配分するように設計されています。
瞳孔径が約3mmの場合、遠方に37%、中間に29%、近方に34%の光が配分されます。
瞳孔径が約4mmの場合、遠方に36%、中間に30%、近方に34%の光が配分されます。
この結果、瞳孔が開く暗所であっても、遠方から中間、手元の視認性を確保することができます。
非球面設計
このレンズは非球面レンズで、その球面収差補正値は-0.1μmです。
角膜の球面収差を補正する値で、私の考えでは大きすぎずとても良い値だと思います。
この値が大きすぎると、眼内レンズの偏心・傾斜でコマ収差が増大しやすく、多焦点眼内レンズの見え方に大きな影響を与えてしまいますが、この-0.1㎛は影響がでにくい、とても良い数値です。
アッベ数
アッベ数とは、レンズ素材が光の波長によって屈折率が変わる度合いを示す数値で、この数値が高いほど、色のズレ(色収差)が低減されると一般的に言われています。
色収差が低減されることで、色の濃淡を見分ける能力(コントラスト感度)の向上が期待されます。アクリバトリノバ Proのレンズ素材のアッベ数は58で高いと思います。
見え方
グレア・ハローの軽減
アクリバトリノバ Proは、「Sinusoidal Vision Technology(正弦波回折構造)」という独自の技術を採用しています。この技術は、レンズ表面の回折格子が「なめらかに変化する構造」になっていることが特徴です。これにより、従来のレンズで問題となることがあったグレアやハローといった不快な光の見え方が他のレンズより軽減されています。しかし回折レンズなので、まったくないということではありません。
また、加入度数が+3.35Dと他のレンズより大きく、これによりハローは薄く見えるため、改善される結果になっています。
グレアハローを改善し、光の配分を瞳孔径(明・暗所)に応じて最適化されるようにデザインされています。非球面構造の球面収差補正値も-0.1㎛で、眼内レンズの偏心・傾斜にも強く、安心の設計です。また親水性レンズでレンズそのものの透明性も長く維持できますし、よいレンズだと思います。
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【監修】
神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
森井眼科クリニック
院長 森井香織
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