第77回日本臨床眼科学会報告
その3 私が企業とコラボして作成した器具〜かおりシリーズ〜|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

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    第77回日本臨床眼科学会報告
    その3 私が企業とコラボして作成した器具〜かおりシリーズ〜|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

    第77回日本臨床眼科学会報告
    その3 私が企業とコラボして作成した器具〜かおりシリーズ〜

    こんにちは。
    臨床眼科学会報告その3です。
    今回は、私が本学会のモーニングセミナーで講演した内容です。
    私が企業とコラボして制作している器具「かおりシリーズ」のご紹介をさせていただきます。

    モーニングセミナーの講師の先生がたのご紹介

    今回のセミナーは、筑波大学眼科学教室教授であり、今学会の学会長である大鹿哲郎先生が座長をしてくださいました。演者は、私とNTT東日本札幌病院の片井麻貴先生、山根アイクリニック 山根真先生です。片井先生は緑内障のSLT治療でとても有名な先生で、山根先生は「眼内レンズ強膜内固定」という世界的に有名な術式を考案された先生で、その手術は「山根メソッド」として世界中に知られています。

    モーニングセミナーというだけあり、朝7時に集合、和やかに打ち合わせの後7時30分から講演開始です。
    朝はやくから、会場には多くの先生が講演を聞きにきてくださり、満員の中で始まりました。

    「難しい手技を誰でも簡単にを目指して
    〜フック・鑷子(かおりシリーズ)〜

    私が担当したのは、株式会社イナミから発売されている、「かおりシリーズ」と呼ばれる、私が考案した器具を使用した手術方法の講演です。
    まず、昨年臨床眼科学会FilmAwardでSilver Awardを受賞させていただいた「かおりの逆フック」という製品です。

    かおりの逆フック 全体像

    かおりの逆フックの先端拡大

    この製品は、従来ある「シンスキーフック」というフックの先端が逆向きになったフックになります。
    眼科手術の器具は、従来下向きベクトルをメインに考えた器具が多いです。私は眼内レンズを摘出しなければならない手術症例(術後の見え方の不具合での眼内レンズ交換や、眼内レンズが目の奥に落下、脱臼してしまった症例など)のご紹介が多く、従来の器具では手術がとてもしづらく、良い器具はないかと考えていました。そのときに、手元にあった器具を反対方向に曲げて使用してみると(手術器具は高額なので、本来このようなことはしてはいけません)、「あら、手術しやすいやん」となり、手術器具メーカーのイナミさんに相談し、製品化していただきました。

    この器具は、もともと眼内レンズ摘出をやりやすくするために考案した器具ですが、この器具の「下から上へのベクトル」を利用した手術方法がいくつか考案されました。

    一つは白内障がとても進行してしまった、硬い白内障に対する「Dual chopテクニック」です。京都でご開業の大内雅之先生が考えてくださいました。逆フックを下からいれて、上から普通のフックで挟み込んで硬い核を分割処理する、という方法です。この方法のお陰で、とても進行した白内障手術も安全に、しかも普通の方法で手術を行うことができるようになりました。

    他には、水晶体のう(白内障を包んでいる袋)を補強するカプセルテンションリング(CTR)の装着、脱着や、虹彩拡張リングの脱着などにも使用すること(これらの方法は私が考案しました)で、難症例の白内障手術も安全にしかも正確な手術ができるようになりました。

    新製品 かおりのDouble(ダブル)フック

    逆フックはとても便利なのですが、下向きの動作が手術中に必要になることがあります。瞬時に器具を持ち替えて行うのですが、慣れていないと手間取ったりしますし、その結果手術が難しくなることもあります。
    それを改善するために、フックの先端の形状を上下両方に作成した「両フック」というものを今回開発、発売の運びとなりました。使用した手術動画も紹介いたしました。
    講演当時は、まだ「両フック」という仮名称でしたが、
    講演後に大鹿先生が「Double(ダブル)フック」と命名してくださいました!
    大鹿先生ありがとうございます!!!
    2024年1月の日本眼科手術学会総会でお披露目になります。

    両フック先端拡大

    両フック全体像

    他の製品について

    かおりシリーズは他にもあります。

    「かおりのノンセレーション25GIL鑷子」は網膜上にできて視力障害を引き起こす「黄斑前膜」や、網膜の中心に穴が開く「黄斑円孔」、糖尿病網膜症などの手術(硝子体手術)の際に使用する器具です。網膜上の細かな膜をこの器具でつまんで除去します。ほかの鑷子と異なるのは、無鈎で先端が平べったく、またサンドブラストコーティングがされているのでつまんだ際に滑りにくく、この器具の先端全体で膜状組織をしっかり把持することができること、器具全体が一般のものより長く、眼軸が長い(眼の奥行きが長い、ド近眼の症例など)患者様でも安全に手術操作を行うことができること、です。これも、自分が手術をする際に、膜状組織をいかに安全に把持して除去できるか、を考えて制作しました。こちらの器具もとても好評で、大鹿先生も愛用してくださっているそうです!

    かおりのノンセレーションの先端拡大

    「かおりの弱湾前のう鑷子」は白内障手術の際、白内障を取り除くために、水晶体嚢の前の「前のう」という部分を円形にくり抜きます。その際に使用するセッシです。私は通常は「チストトーム」という針を折り曲げたものでその操作を行いますが、目やまぶたの形状によってその操作が難しい症例は、つまんで操作を行うセッシで行うほうが安全です。そのためのセッシです。他の製品より先端のカーブが弱く、従来の製品では難しい症例でも簡単に操作を行うことができます。

    かおりの弱彎前嚢鑷子

    上が従来の鑷子で、下かかおりの前嚢鑷子。 カーブや長さが異なる。

    今後の製品開発にむけて

    今回のセミナーの後、株式会社イナミさんのブースに多くの先生方がお越しくださり、実際の器具を手にとったり、購入を検討してくださいました。

    今まで多くの手術を行ってきた中で、「手術操作を簡単に、シンプルにすることが安全な手術になる」という考えに至りました。多くの先生方にも使用していただきとても使用しやすいとお言葉を頂戴し、眼科治療に微力ながら貢献できているかな、と思っています。今後も眼科の先生方の手術のお役に立てるよう、手術経験を製品開発に活かしていきたいと思います。

    企業展示上のイナミさんのブースで、セミナーポスター前で撮影。

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    【監修】

    神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
    森井眼科クリニック
    院長 森井香織

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