「日本の眼科10月号」球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズについて|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

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    「日本の眼科10月号」球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズについて|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

    「日本の眼科10月号」球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズについて

    こんにちは。
    今回は、前回のお知らせしました、私の執筆記事「日本の眼科10月号」の学術記事「IOLの基礎 収差から考える眼内レンズ」の
    後半部分の「球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズ」についてです。
    私の専門分野である、「球面収差」がこのように注目されるようになり、とてもうれしいです!
    (正直眼科業界ではあまり注目されていませんでした。。。)
    私が今回執筆を依頼されたのも、眼内レンズの球面収差の専門の人があまりいないからでしょう。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    まず多焦点眼内レンズについて

    多焦点眼内レンズは、単焦点眼内レンズだと一つの焦点しかないところを、複数の焦点を持つように設計された眼内レンズです。
    例えば、ピントを遠方のい合わせた場合、遠くは裸眼で見えるようになるが、手元は眼鏡かけないと見えません。
    眼鏡をかけなくても近くを見えるように、というコンセプトで開発された眼内レンズが多焦点眼内レンズになります。
    光学設計には、屈折構造と回折構造があり、どちらのあ設計でも光を複数に分けて眼内に届けます。
    ただ、遠くと近くの二つの焦点を作成すると、その二つの焦点の違いが明確にわかりみえにくいという不具合も生じ問題となる方も多くいました。
    そのため、遠方焦点と近方焦点の幅を狭くし、2つの焦点の間の違いを感じにくくなるよう設計されたものがEDOF多焦点眼内レンズです。
    しかし、これらのレンズは、設計が「回折型」や「屈折型」であるため、コントラストの低下やグレア、ハローという眼鏡では改善できない不具合が生じていました。
    それを改善するために開発されたのが「球面収差を利用した単焦点眼内レンズ」です。

    球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズについて

    「球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズ」とはなんでしょう?
    これは単焦点非球面レンズに球面度数(低次収差)を組み込み、焦点幅を広げるように設計されたものです。
    ベースが単焦点眼内レンズであることと、使用しているのが球面収差であるため、
    回折型や屈折型単焦点眼内レンズで発生していた、コントラストの低下やグレア、ハローなどの不具合な現象が発生しません。
    ただ、多焦点眼内レンズのように複数の焦点があるわけではないので、遠方ピントに合わせた場合は手元はやはり老眼鏡が必要になります。
    しかし、常時発生していた、多焦点眼内レンズでの不具合が生じないということは、快適な日常生活を供給する、ということを意味します。
    その結果、現在世界の主流になりつつあります。

    当院で採用している、球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズはこちらになります。

    当院採用の球面収差を活用した新しい単焦点眼内レンズについて

    当院採用の、このタイプの新しい眼内レンズについての設計を説明します。

    Vivity(Alcon)については非球面単焦点レンズの中央部分に度数が組み込まれ、その周辺に遠方の円環ゾーンがあり、遠方から中間視力を実現します。
    設計構造上選定療養のレンズになりますが、非常によく考えられた設計だと思います。

    Alcon ClareonVivity

    Eyhanse(AMO)は、眼内レンズ中央のみに球面収差が組み込まれているシンプルな構造です。
    通る光は網膜の手前に焦点が結ばれ、IOL全体を通る光が網膜面に焦点を合わせる仕組みとなっています。

    AMO社 Eyhance

    SP3(NIDEK)は日本製のレンズで、眼内レンズ中央と、そこから少し離れた2mmの部分にも球面収差が組み込まれています。

    Nidek社 SP3

    参天製薬のLentisコンフォートはレンズの上部分が遠方度数、下半分が中間度数となっています。

    Lentis confort(レンティスコンフォート:参天製薬)
    これらの眼内レンズは、球面度数を上手く取り入れ、低次収差を活用し、優れた焦点幅を手に入れています。

    興味深いことに、日本未承認のRayOneEMVは眼内レンズ周辺になるほど球面収差が組み込まれています。
    これは、いわゆる昔の球面レンズを進化をさせたデザインであり、良好な網膜コントラスト像と幅広い焦点を提供し、かつ眼内レンズの偏心傾斜にもものすごく強いです。
    球面レンズでいいやん!と従来思っている私の考えとぴったり!です。早く日本で認可されてほしいです。

     球面収差について思うこと

    非球面眼内レンズは「よりよい網膜像コントラスト」を目指して開発されてきました。
    素晴らしいコンセプトであり、角膜球面収差を考慮して非球面眼内レンズを選択することで、よりよい網膜像が得られます。
    逆に、現在の新しい球面収差を活用した眼内レンズは、低次収差を単焦点眼内レンズに有効に活用して焦点幅を広げています。
    従来の非球面単焦点眼内レンズよりはコントラストは落ちますが、昔主流であった球面レンズに戻るかの如くです。
    眼内レンズの収差に興味を持って研究してきた、珍しい眼科医である私にとっては、
    ものすごく興奮する出来事です。
    「回折」や「屈折」などのウルトラC的なものよりも、従来存在している収差を活用してくれてとてもうれしいです。
    「収差」は人間の眼球にとっては必要なものなのだと思います。人間なんでも「きっちり」より、「遊び」の部分があったほうがよいのと同じなのかもしれません。
    またその収差も、患者様皆様一人ずつどれがよいか異なるのです(9月の講演を参考にしてください)。

    収差はとても奥深く楽しい世界です。
    収差を考慮して眼内レンズを選択することで、よりよい結果を皆様に提供できると考え、
    日々眼内レンズ選択と手術を行っています。

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    【監修】

    神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
    森井眼科クリニック
    院長 森井香織

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