眼内レンズの選び方
2.コマ収差について|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

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    眼内レンズの選び方
    2.コマ収差について|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

    眼内レンズの選び方
    2.コマ収差について

    こんにちは。今回は単焦点眼内レンズの選び方の第2回です。

    前回は、角膜球面収差や非球面単焦点眼内レンズとはなにかについて説明させていただきました。

    今回は非球面単焦点眼内レンズによって発生するコマ収差という、高次収差についてお話いたします。

    コマ収差とは

    収差とは、簡単に言いますと「光のずれ」のことです。

    その光のずれの原因により、「低次収差」と「高次収差」に分類されます。

    眼球でいいますと、低次収差とは「近視」や「遠視」「正乱視」などで、これらの光のずれは眼鏡やコンタクトなどのレンズで補正することができます。

    下のピラミッドの図の上の部分にあたるもので、補正すればよいので問題にはなりません。

    ゼルニケ多項式: 上から3段目までが低次収差と呼ばれる収差で矯正可能な収差。

    この図の上から3段目より下を高次収差とよび、「色収差(色によって光の入る距離が異なる)」「非点収差」などいろいろあります。

    その高次収差のなかの一つが「コマ収差」と呼ばれるものです。

    このコマ収差は、眼内レンズを挿入した場合に生じることがある高次収差です。

    角膜はレンズですがその位置はかわりません。眼内レンズが光が通る部分の中央にしっかり固定している場合には

    発生しませんが、中央から(光軸から)ずれる(偏心)や傾いたり(傾斜)した場合に発生します。

    角膜を通る光と眼内レンズを通る光が干渉してしまい、図のような尾を引いたような光のズレとなります。

    コマ収差のシミュレーション像

    これはメガネやコンタクトレンズでは矯正できません。

    眼内レンズによるコマ収差について以下のような報告がされています。

    ・眼内レンズが偏心・傾斜するとコマ収差が増加すること(Influence of intraocular lens tilt and decentration on wavefront aberrations.Taketani F. .J Cataract Refract Surg 2004;30(10):2158-2162.)

    ・非球面眼内レンズは、球面眼内レンズより偏心、傾斜した場合のコマ収差の増加は大きいこと(Fundamentals of Irregular Astigmatisum and Clinical Research Spherical Aberration

    Kazuhiko Ohnuma ,Jpn Vis Sci28:132-139,2007)

    ・球面収差補正値の大きな非球面IOLは、球面収差補正値の小さな非球面IOLより偏心傾斜した場合のコマ収差、高次収差の増加が大きいこと。(Effect of decentration and tilt on the image quality of aspheric intraocular lens designs in a model eyeTimo Eppig、J Cataract Refract Surg 2009; 35:1091–110)

    ですので、球面収差補正値の大きい、角膜球面収差をしっかり補正する眼内レンズは、偏心・傾斜した場合コマ収差の増加が著しく、視機能に重大な障害を与えてしまうのです。逆に、球面収差補正値の小さな眼内レンズは偏心傾斜した場合でもコマ収差の発生量がすくなく、視機能に影響を与えにくいです。

     

    眼内レンズは偏心・傾斜するのか?

    眼内レンズは、白内障手術の際に、白内障を包んでいた透明の袋(水晶体嚢)の中に固定して終了します。
    問題なく手術が終了した場合は基本的には偏心、傾斜することは少ないと考えられます。
    しかし、白内障手術の際に水晶体嚢に破損が生じた場合は眼内レンズの固定が不安定になり偏心傾斜しやすくなります。また、「落屑症候群」と呼ばれる、水晶体嚢の表面にフケ状の沈着物が付着している方は、水晶体嚢と眼球をつなぐ「チン氏帯」という細い組織が脆弱で有ることがあり眼内レンズの偏心傾斜のリスクがあります。また、眼球打撲などの外傷の既往のある方は、すでにチン氏帯が断裂していることもあり、リスクがあります。

    ですのでそのようなリスクのある方には、球面収差補正値の大きな非球面眼内レンズを挿入することは、将来的にコマ収差の発生の可能性がある、ということになります。

     

    非球面単焦点眼内レンズの選び方〜球面収差の観点から〜

    前回と今回のお話をまとめると、眼内レンズの選択について球面収差の観点から考えるとこのようになります。

    ・白内障術前検査で「角膜球面収差」を測定する。

    ・偏心傾斜のリスクが少ないと思われる症例は、角膜球面収差値を過補正にならない程度に補正できる眼内レンズを選ぶ。

    ・偏心傾斜のリスクがあると考えられる症例は、球面収差補正値の小さな眼内レンズを選ぶ。またその場合には、最初から偏心傾斜したときに眼内に再固定できるタイプの眼内レンズにしておく。

     

    まとめ

    眼内レンズを選ぶということは、その方の眼球の様々なデータに基づき、「なぜこのレンズを選択したか」のしっかりした理由付けが大切だと私は考えて手術を行っています。様々な眼科の講演会でこのお話をさせていただき、この考え方も少しずつ浸透していき、世の中の白内障手術をうける患者様たちのためになれば良いなあと思っています。

    角膜球面収差が過補正になっている眼内レンズの入れ替えや、偏心傾斜してしまったレンズの入れ替え、眼内レンズの強膜内固定なども行っており、少しでも眼内レンズによる見え方の不具合を減らせるよう治療を行っています。

     

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    【監修】

    神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
    森井眼科クリニック
    院長 森井香織
    →院長の紹介はこちら🐸!
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