眼内レンズの選びかた
1.球面収差について(長野県眼科医会集談会で講演した内容です)
- 2023年9月26日
- 白内障
こんにちは。
9月9日に、長野県松本市長野県眼科医会集談会で講演させていただきました。
内容は、私がライフワークとして研究・発表を行っている「眼内レンズ」についてです。今までもこの内容で全国で多数講演をおこなってまいりました。
皆様にもわかりやすいように、講演内容を何回かに分けて説明させていただきます。
今回の内容は「球面収差について」です。
球面収差とは?
私が単焦点眼内レンズを選択する上での重要な要素の一つとして考えているのが「角膜球面収差」です。
ものを見るとき、眼球の中に光が入り網膜に光が届き、光の情報を受け止めます。角膜、水晶体が光を通って網膜の中心部分の黄斑というところに光が届きます。角膜を光が通るとき、角膜の中央部と周辺部では光の屈折力が異なります。そのため、眼内に光が入る際光が一点に集光せず光のズレが発生します。それを「角膜球面収差」と呼びます。この「角膜球面収差」は症例によってばらばらで、測定しないとわかりません。一般の眼科クリニックでは測定機器はありません。当院では前眼部OCT(CASIA2)と波面収差解析装置(KR1w)で測定を行っています。
その光のずれを補正してなるべく網膜上に光が一点に集光するように、角膜の球面収差を補正するために逆の球面収差をつけた単焦点眼内レンズが「非球面眼内レンズ」と呼ばれるレンズになります。角膜で発生する光のズレを眼内レンズで補正することで、よりはっきりした画像が網膜に届く、ということです。
角膜球面収差の平均値は約+0.25μmくらいだといわれていますが、個人差が非常に大きく、また年齢とともに増加するとされています。私があさぎり病院の白内障手術前患者様で計測したデータは図のような結果で、ばらつきがとても大きく、個人差が大きい数値であることがおわかりいただけると思います。
単焦点非球面眼内レンズの球面収差補正値について
非球面単焦点眼内レンズは、色々なメーカーから発売されています。現在我が国では主なメーカーだけで7社ほどあり、それぞれのメーカーのコンセプト(考え方)により、非球面単焦点眼内レンズの球面収差補正値は異なります。角膜球面収差の平均値と言われるものをもとに各メーカーが設定するのですが、あるメーカーは、角膜球面収差をしっかり補正しようと大きな補正値を設定していますし、また別のメーカーはほどほどの補正をとの考えで補正値を小さく設定しているメーカーもあります。この図のように、メーカーごとに大きく違い、非球面単焦点眼内レンズと言いましても、レンズによって性能はばらばらです。
白内障手術の際の眼内レンズ選択の考え方
私が白内障手術に使用する眼内レンズを決定する際に重視する項目の一つが「角膜球面収差」ですので白内障術前検査時に前眼部OCT(CASIA2)と波面収差解析装置(KR1w)で撮影を行い、角膜球面収差値も測定します。(これらの検査のコストは保険診療では算定できませんので、当院で負担させていただいております。その測定結果からどのメーカーの単焦点非球面眼内レンズにするかを決定します。)(レンズの度数の決定などはまた別の機会に説明いたします)
球面収差補正をしっかりすればよい網膜像が得られますが、補正しすぎると眼外に焦点幅が出てしまいます。このようになると光の情報が眼球内に少なくなってしまいます。過補正という状態です。眼内に光の焦点の幅が残っていればそれは焦点幅として「見る」ことに使用できますが、過補正になると焦点に使用できる光がなくなり、「視力はでているがどこにもピンとがあっていない感じ」になります。こういう状態にならないように、角膜球面収差を補正しすぎないように、非球面眼内レンズの補正値を決定します。焦点に使用できる光をしっかり確保し、かつ網膜像をよりよくする、という考え方でレンズを選択しています。
次回は、球面収差補正値が大きなレンズの弱点について説明いたします。
おまけ:長野 🐸情報
長野県松本市にある「縄手通り」は、カエルがたくさん!ありカエル好きの聖地です。カエルの銅像などがたくさん!
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【監修】
神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
森井眼科クリニック
院長 森井香織
→院長の紹介はこちら🐸!
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