抗がん剤と流涙症|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

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    ブログ・眼光学のお話

    抗がん剤と流涙症|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

    抗がん剤と流涙症

    こんにちは!

    今日は抗がん剤使用における流涙症発症についてのお話しです。

    流涙症とは、目から涙が過剰に流れ出る状態を指します。
    涙は目の表面を保湿し、汚れや異物を除去する役割を果たしますが、何らかの原因で余分な涙の排出がスムーズに行われない場合、流れきらない涙が溢れる状態のことをいいます。

    その原因の一つに、抗がん剤があります。そのお話です。

     

    流涙症の主な原因

    涙が目から鼻へと流れる経路(涙道)のどこかに問題がある場合に起こります。
    涙点や涙小管、鼻涙管が閉塞すると、涙がながれないので涙が溢れます。

    主な症状

    • 涙が常にあふれて、ハンカチを手放せない。
    • 涙のせいで視界がぼやけたり、眩しく感じる。
    • 涙のせいで目の周りがただれる。

    診断方法

    1. 問診と視診
      流涙の状況や生活習慣を確認。
    2. 涙液排出検査
      涙道の通過性を確認するため、蛍光色素などを使ったテストを行う。
    3. 涙道造影検査
      涙道の構造を詳しく調べるために造影剤を用いてX線撮影を行う。
    4. 涙液分泌量の測定
      シルマーテストを使い、涙液の分泌量を測定。

    抗がん剤治療に関連する涙道閉塞(涙道障害)は、主に以下のような原因で発生します:

    主な原因

    1. 抗がん剤による涙道の炎症や線維化

      • 特にドセタキセルパクリタキセルといったタキサン系薬剤が原因として知られています。これらは涙道や周囲の組織に炎症を引き起こし、線維化や閉塞を誘発することがあります。
    2. 涙液の粘性増加

      • 抗がん剤が涙液の性状に影響を与え、排出が困難になる場合があります。
    3. 直接的な毒性作用

      • 薬剤が涙道上皮に直接影響を及ぼし、機能障害を引き起こします。

    症状

    • 目の涙が止まらない(流涙症)
    • 涙道の腫れや圧痛
    • 眼の周囲の違和感

    流涙の原因となる抗がん剤とその適応疾患

    ドセタキセルやパクリタキセルは、タキサン系抗がん剤と呼ばれ、さまざまな癌種の治療に用いられます。これらは細胞分裂を阻害することで癌細胞の増殖を抑える作用があります。以下に主な適応疾患を挙げます。

    1. 乳がん

    • 適応状況
      • 早期乳がん(術後補助療法として使用)
      • 再発・転移性乳がん(単剤または他の薬剤との併用療法)
    • 効果
      タキサン系薬剤は乳がん治療において非常に有効で、特にホルモン受容体陰性やHER2陽性の乳がんで使用頻度が高いです。

    2. 卵巣がん

    • 適応状況
      • 初回治療(カルボプラチンとの併用が標準治療)
      • 再発・進行卵巣がん
    • 効果
      パクリタキセルは卵巣がんの治療の中核を担う薬剤で、再発リスクを軽減します。

    3. 非小細胞肺がん(NSCLC)

    • 適応状況
      • 手術不能な進行・再発肺がん
      • 他の薬剤(プラチナ製剤など)との併用療法が一般的
    • 効果
      ドセタキセルは、特にプラチナ製剤不応の症例で使用されます。

    4. 胃がん

    • 適応状況
      • 手術不能または再発胃がん
      • 他の抗がん剤(シスプラチン、フルオロウラシルなど)と併用されることが多い
    • 効果
      化学療法レジメンの一部として、延命効果が確認されています。

    5. 前立腺がん

    • 適応状況
      • 去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)
        他の治療(ホルモン療法など)が効果を示さない場合に使用される。
    • 効果
      ドセタキセルが標準治療として用いられ、生活の質(QOL)を改善する効果があります。

    6. 頭頸部がん

    • 適応状況
      • 手術不能または進行性頭頸部がん
      • 放射線治療との併用療法
    • 効果
      癌の縮小と生存率向上を目的としています。

    7. その他のがん

    • 食道がん
      放射線治療や他の抗がん剤との併用療法で使用される。
    • 膀胱がん
      再発性や転移性の場合に適応されることがあります。

       

      治療法

      抗がん剤による流涙は早期の治療が重要です。
      抗がん剤による流涙は、大部分が涙点閉塞、涙小管閉塞です。
      一度発症してしまうと、あっという間に進行して涙道が閉塞してしまい、
      外科的治療が困難になってしまいます。

      1. 排出障害の治療

      • 通水処置
        涙道に生理的食塩水を流して、流れを改善。
      • 涙道ステント挿入
        涙道に小さなチューブを挿入して閉塞を防ぐ。

      2. 眼表面の治療

      • 涙液に含まれる抗がん剤濃度の低下を促す
        人工涙液を頻回に点眼し、涙に含まれる抗がん剤の濃度を低下させ、角膜や涙道への影響を抑える。

      抗がん剤は、癌の種類や進行度、患者の状態に応じて適切に選択されます。
      抗がん剤治療中に流涙を感じたら、早めの眼科受診と、主治医と相談しながら最適な治療法を決定することが重要です。

       

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      【監修】

      神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
      森井眼科クリニック
      院長 森井香織
      →院長の紹介はこちら🐸!
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