第77回臨床眼科学会報告
その2 網膜再生医療について|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

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    第77回臨床眼科学会報告
    その2 網膜再生医療について|森井眼科クリニック|神戸市東灘区御影駅前

    第77回臨床眼科学会報告
    その2 網膜再生医療について

    こんにちは。
    今回は臨床眼科学会の報告その2として
    「iPS細胞からの網膜再生医療について」です。

    iPS細胞を使った網膜再生医療は、神戸アイセンターを中心に研究が進められています。
    2019年7月まで理化学研究所多細胞システム形成研究センター網膜再生医療研究開発プロジェクトのプロジェクトリーダーで、現在は網膜再生医療の実現化を目指す「ビジョンケア」の社長に就任されている、高橋政代先生の特別講演を聴講させていただきました
    今回はその内容をまとめさせていただきました。

     

    神戸が誇る医療都市について

    神戸医療産業都市構想は、1998年から神戸市のプロジェクトとして始動しました。
    理化学研究所や大学等の研究機関、神戸市立医療センター中央市民病院をはじめとした高度専門病院群および医療関連企業・団体が神戸のポートアイランドに集積して、
    産学官医連携で研究開発から事業化までを強力にサポートする環境とサービスを提供し、医療分野で数々のイノベーションを起こしています。
    1995年1月の阪神淡路大震災からの復興を目指して始動しました。

    神戸医療産業都市の眼科部門が、神戸アイセンターを中心としたグループになります。


    その中の、高橋政代先生が代表を務める
    ビジョンケアグループは、iPS細胞の臨床応用に世界で初めて成功したチームが研究・臨床・患者ケアを一体化とする神戸アイセンター構想のもと、網膜疾患の治療開発にとどまらず、視覚障害者が抱えるあらゆる問題を解決するために設立されました。遺伝子治療実用化に向けた株式会社VC Gene Therapy、細胞医療実用化に向けた株式会社VC Cell Therapyを目的別子会社に持ち、神戸市立神戸アイセンター病院との共同研究を進めています。
    「すべての患者さんのために、あらゆる解決策を」を目指し、再生医療、遺伝子治療、ロービジョン者の就労支援に至るまで、他企業との連携を含め、シーズ育成・事業化支援に取り組んでいます。

    網膜再生医療について

    山中伸弥教授がiPS細胞でノーベル賞を受賞後、iPS細胞を使った治療は多数研究が行われています。

    眼科分野では、2014年9月に世界で初めて神戸アイセンターで、加齢黄斑変性症で視力が非常に悪い患者さんに、その患者自身の皮膚の細胞からつくったiPS細胞を、さらに網膜色素上皮細胞に変化させてシート状にしたものを患者さんの右目の網膜下に移植されました。その後、現在術後7年の今年3月の段階で、iPS細胞からつくった細胞シートは移植された場所にとどまり、腫瘍化など異常な細胞増殖もなく、加齢黄斑変性の病気そのものの悪化もなく、追加治療はされずに現状を維持していると、今年4月に開催された日本眼科学会総会で報告がありました。

    シート移植。画像はリリースより。

     

    網膜再生医療は、自身の細胞から作成したシート状の網膜色素上皮移植から、現在他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞懸濁液移植(自分の細胞ではない細胞から作成されたiPS細胞をもとに作成された、網膜色素上皮細胞が入った液体を網膜下に注射で移植する)になっています。

    懸濁液移植。画像はリリースより。

    2018年から行われた治験症例5例では例において、他家iPS細胞由来網膜色素上皮細胞に対する免疫反応を、免疫抑制剤の投与なしに局所ステロイド投与のみで抑えることが可能であることが報告されました。
    移植治療は、自分の細胞でない細胞を攻撃してしまい、移植した細胞がだめになってしまう「拒絶反応」が問題で、その反応を起こさないために「免疫抑制剤」を使用しますが、全身にも大きなダメージを与えてしまいます。この網膜細胞移植は免疫抑制剤を使用せずにすむので、ご高齢の患者様が多いこの疾患の治療としてはとても良いことだと思います。

    iPS細胞の培養について

    このようにiPS細胞から網膜色素上皮を作成、再生医療が確立されてきています。そこで問題になるのが、iPS細胞の培養です。今回の高橋政代先生の講演によると、以前は熟練したスタッフでないとうまく培養できず、効率が悪かったようです。そこで、AIに熟練したスタッフとそうでないスタッフの操作の違いを学習させ、そこから得られた技術を培養ロボットに学習させたところ、非常によい培養細胞が効率的に作成できるようになったそうです。
    それが、最先端のAIとロボティクスの技術を用いたLabDroid「まほろ」というものです。国立研究開発法人産業技術総合研究所と安川電機が共同で開発されたものです。
    この「まほろ」を細胞培養に用い、人間の「匠の技」だけに頼らないiPS細胞由来網膜細胞の作製を実現されているそうです。
    最近は、夜中やお正月でも徹夜でロボットをAIが管理、操作して、効率よく培養作業を行っているとのこと、人間ではできないことですよね。すごいなあと大変驚きました!

    「まほろ」実際に細胞の培養に貢献している。

    最後に

    網膜再生医療の最先端で医療に従事しながら、研究や、AIを駆使したiPS細胞から網膜色素細胞の作成方法の構築、ひいては政府などとの交渉を行い新しい枠組みを作っておられる高橋先生のお話を直接聴講することができ、ものすごい「パワー」をいただきました。
    ここ数年は、学会もweb上での開催が多く、リアルに講演を聞く機会がありませんでしたが、やはり現地で直接お話を聴くと、なにか直接体全体に伝わるものがあるなあと思いました。

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    【監修】

    神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
    森井眼科クリニック
    院長 森井香織
    →院長の紹介はこちら🐸!
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