JSCRS学会報告その1 私の講演について
こんにちは。
6月28日〜30日に福岡市で開催された、第39回JSCRS総会(眼内レンズ屈折矯正手術学会総会:福岡)に参加してきました。講演を行いましたので今回はそのご報告です。
講演はNIDEK社のランチョンセミナーです。
昨年新しく発売されたenhanced monofocal IOLであるNSP3という眼内レンズについてのセミナーです。
セミナー名は「国産のIOLって実際のところどうなの?」で、国内メーカーであるNIDEKの眼内レンズの講演になります。
(国内メーカーの興和株式会社も国産眼内レンズを発売しています。HOYA、参天製薬の眼内レンズは海外で眼内レンズを製作しています)
NSP3という眼内レンズは、当院のHPにも詳しく掲載していますが、眼内レンズ中央に球面収差を加入して、焦点の幅を広げている、新しい単焦点眼内レンズ(enhanced monofocal IOL)になります。そのレンズの光学的な特徴を、模型眼を用いて実験を行い、その結果をセミナーで眼科医の先生方に紹介させていただきました。
実験の結果を簡単に説明いたします。
眼内レンズの偏心・傾斜の影響
NSP3は、レンズ中心に球面収差が加入されていますので、眼内レンズが中央から少し偏心(ずれる)したり、傾斜(傾いたり)すると、眼内へ入る光の速度にずれが生じてしまうため
「高次収差」というものが発生してしまいます。これは、他のenhancedmonofocalも同じで、シンプルな単焦点眼内レンズに比べて少し複雑な光学設計になるため、仕方がない部分です。
この「高次収差」は光のずれを発生させます。これは眼鏡では矯正できない、不快な光になりますので、眼内レンズがずれたり、傾いたりする可能性のある症例は避けた方がよいです(眼に外傷の既往があるかたなど)。
眼内レンズの光軸方向へのずれの影響
NSP3の販売キャッチフレーズは「「光軸方向への変異が生じても結像性能変化の少ない非球面構造」とされています。
このキャッチフレーズについても本当なのか、模型眼に挿入し、眼軸(眼の奥行)を変更させてどのような影響があるか調べました。
一般的に、眼球の奥行の長さが長くなると、眼の度数は近視になっていきます。このNSP3は奥行の長さを変更しても、模型眼の度数に少し変化はあるものの、非常に小さな変化でした。
ということは、「焦点の合う距離が広い(焦点幅がひろい)眼内レンズ」ということになります。(少し難しいでしょうか・・・・)
結果から、このレンズは従来の単焦点眼内レンズより、焦点の幅が広くなっている、ということになります。
(実際のデータは、現在論文投稿中のためこちらでは公表していません。)
enhanced monofocalの有用性
今回講演したNSP3以外のenhanced monofocal 眼内レンズも、同様に焦点の幅が従来の単焦点眼内レンズよりも広くなっています。少し複雑な構造なので、挿入には少し注意は必要ですが
多焦点眼内レンズで発生する、コントラスト感度低下やグレア・ハローといった不快な症状もありません。
またこのNSP3は、国内のメーカーが国内で製造している、メイドインジャパンの製品になります。今後使用される先生方が増えるだろうと思っています。
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【監修】
神戸市東灘区御影中町1丁目6−9ウエダビル2,3階
森井眼科クリニック
院長 森井香織
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